Dior : 飲食業界

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物価上昇と長引くコロナ禍の影響により、ホスピタリティ産業にとっては厳しい時代となりました。消費者は苦労して稼いだお金を外食に回すことが少なくなっているため、バーやレストランは事業を維持するためには、より創造的でなければならなくなってきています。

 

こうした課題に直面するなか、ホスピタリティ企業では、思い出に残るような食事を楽しめる没入型の体験を作り出すことでこの時代に対応しています。また、より安定した収益を生み出すために、多くの企業が新しい会員制モデルを試みています。

一方、ラグジュアリーブランドは、ワンランク上の料理との出会いを提供することで、その市場の裾野を広げています。その多くが伝統的な技術や名声を生かしつつ、ミシュランの星付きシェフが指揮をとるレストランをオープンさせています。贅沢な体験への需要が高まるなか、ブランド各社は体感的な喜びを自社のDNAの中核に据える機会を得ました。

Lavinia Fasano

フォーサイトアナリスト

15 July 2022

Author: The Future Laboratory

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キャビアの人気復活

キャビアは数千年前から高級食材として知られており、古代ギリシャの貴族の食卓において最初に登場しました。今、キャビアの人気は復活を遂げつつあります。英国の高級スーパーマーケットチェーン「Waitrose」では、キャビアが飛ぶように売れており、2021年の売り上げは前年比52%増(出典:The Telegraph)と好調でした。他の地域では、シェフたちがキャビアをメニューに戻すために創意工夫を凝らしています。

ニューヨークでは、いくつかのレストランが「キャビア・バンプ」を提供し始めています。Temple Barなどのレストランでは、キャビアをブリヌイやクラッカーに塗る代わりに、客の手に直接キャビアを乗せて、舐めて塩味を楽しむように勧めています。下品に聞こえるかもしれませんが、ラグジュアリーなライフスタイルサイト「La Patiala」の創設者であるKristen Shirley氏は、自身のInstagramでエレガントにそれを行う方法を紹介しています。

ファッションセッターがこよなく愛するフレンチレストラン「Caviar Kaspia」の一番人気は、ベイクドポテトにキャビアをたっぷりとトッピングした一品です。今後数か月のうちに、サントロペとニューヨークの2か所に新店舗をオープンする予定で、この珍味の魅力がますます高まっていることがうかがえます。

話を広げる:他に復活を遂げそうな珍味はありますか?お客様にレストランに復活させてほしいグルメを聞いてみましょう。

画像:ニューヨークのTemple Barで提供される「キャビア・バンプ」
画像: Bompas & Parrのコンビによる「自然の力」、サウジアラビア

究極の食事

食材ひとつで調理した一品やサイケデリックなサウンドトラックなど、レストランは冒険的な食の体験を通じて来店者に思い出に残るひと時を提供しています。

ストックホルムの「Brutalisten」では、アーティストのCarsten Höller氏が、レシピではなく食材を主役とする食材ひとつで作り上げる料理の原則に則った料理の品々を提供しています。来店者は3種類のメニューから選ぶことができます。例えば、セミ・ブルータリストはオリーブオイルをひと振りしただけの料理、オーソドックス・ブルータリストは水や塩、追加の食材を一切使っていない料理です。

サウジアラビアの地下にある休火山にインスピレーションを受けた美食家コンビのBompas & Parrの二人は、ユネスコの世界遺産であるヘグラで「自然の力」をテーマにしたダイニングを開催しました。1,350℃の溶岩の流れの上で数々の料理が調理されました。

話を広げる:今まで食べた食事の中で最も印象に残っているものは何か、その体験のどんな点が特別だったのかをお客様に尋ねてみてください。

画像: Saverglass、Akatre提供

ヴィンベストメント(ワイン投資)

株式市場が先行き不透明となっているなか、ワインがその代替投資市場としての成長分野となっています。過去10年間で、高級ワインの価値は平均127%上昇しました(出典:Knight Frank)。

世界的に高級ワインの売り上げが急伸しています。IWSR Drinks Market Analysisのアメリカ地域担当最高執行責任者のBrandy Rand氏は、「プレステージや高級ブランドを含むスーパープレミアム以上の価格帯のワインやスピリッツは、長年にわたって業界の明るい話題となっている」と語ります(出典:Luxury Daily)。

プレミアムワイン分野の成長に乗じて、LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)傘下のワイン&スピリッツ会社Moët Hennessy(モエ・ヘネシー)が、トップシャンパンとワインの高級オンラインショッピングサイト「OurCellar.com」を立ち上げました。

このマーケットプレイスは、消費者のための同社初の直販プラットフォームであり、Moët & Chandon(モエ・エ・シャンドン)、Dom Pérignon(ドン・ペリニヨン)、Veuve Clicquot(ヴーヴ・クリコ)、Krug(クリュッグ)などのブランドの限定発売、限定ボトル、ギフトバンドル、名入れなどを利用することができます。

話しを広げる:お客様に、ワインがお好きかどうか、また、ワインを投資対象として見ているかどうかを尋ねてみてください。

ラグジュアリーの食戦略

ラグジュアリーファッションブランドは、収益源を多様化させながら、感動を呼び起こすような豊かな顧客体験を生み出そうと、飲食業界に進出しています。

モンテーニュ通り30番地にオープンした高級レストラン「Monsieur Dior」では、ベテランシェフのJean Imbert氏が、クチュリエの食とグルメへの情熱を料理へ転化させています。2019年以来、ImbertシェフはMonsieur Diorの感性をより深く理解するために、Diorのアーカイブを研究してきました。

パリのホテル「Cheval Blanc」にあるLVMHが支援するレストラン「Plénitude」が、オープン1年目でミシュランの3つ星を獲得しました。シェフのArnaud Donckele氏は、過去30年間でこれを達成した2人目のシェフになります。

その他、サントロペの「Restaurant Mory Sacko」は、Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン)がフランスで最初にオープンしたレストランです。40席のスペースには、屋外イートインエリアがあり、フランス系西アフリカのシェフ、Mory Sacko氏が監修しています。ここでは、日本の弁当などの料理を再アレンジしたものが提供されています。

話しを広げる:ラグジュアリーブランドがレストランに進出することについてどう思うか、また、思い出に残る際立った体験を創造するために、ラグジュアリーブランドがその伝統をどのように生かすことができるかをお客様に尋ねてみましょう。

画像: パリのモンテーニュ通り30番地の「Monsieur Dior」
画像: サンフランシスコのSHOにあるスカイラウンジ

今後の展望:クリプトダイニングクラブ

食とテクノロジーの結びつきはますます強まっています。中国の「Pinduoduo」のような人気の食料品アプリや、世界各地でのフードデリバリーサービスの台頭を考えてみればわかるでしょう。Web3の時代に突入した今、新たなブレイクスルーが次々と起こりつつあります。

2023年にニューヨークにオープンする「Flyfish」は、ブロックチェーンによって管理された初の会員制ダイニングクラブとなるそうです。このレストランを訪れるには、顧客はFlyfish NFTを所有する必要があり、そうすることでカクテルラウンジとダイニングルームの利用が可能になります。

同様にサンフランシスコでは、ホスピタリティプラットフォームの「SHO Group」がNFTで管理された日本食レストランをオープンしています。会員権は全部で3,265名分あり、最も高額なものは250,955ポンド(300,000米ドル、296,395ユーロ)です。会員限定メニューやレストランのプライベートラウンジへのアクセスに加え、最上位会員には一生に一度の日本への厳選特別旅行を楽しむことができます。

話を広げる:Diorはどのようにすれば、NFTトークンやメンバーシップモデルを利用して、お客様のために特別な体験を実現することができるでしょうか?



お読みいただきありがとうございました。
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