オークション会社もまた、輝かしい季節を迎えています。今年度のUBSとアート・バーゼルの報告書によれば、2021年における世界の美術品と骨董品の売上高は29%増加し、パンデミック前の水準を上回りました。ニューヨークのクリスティーズでは、芸術家アンディ・ウォーホルの絵画が1億6000万ポンド(1億9500万ドル、1億8600万ユーロ)で落札され、20世紀の美術作品としては史上最高額となりました(出典:アートフォーラム)。
しかし、まだ1つの疑問が残っています。すなわち、この市場は他の投資分野における低迷に耐えられるのかということです。美術品業界における史上最高額による売却を実現した競売人、ロイック・ガウザー氏によれば、美術品は「不況に対する優れた免疫的防護力を備えていると思われる数少ない資産の1つ」かもしれないとのことです(出典:ニューヨーク・タイムズ)。以下にご紹介する今年度のショーやイベントの質の高さは、私たちに希望を持たせてくれるものです。
ラヴィーニア・ファサーノ(フォアサイト・アナリスト)
アートの世界では、多様性と表現力が高まっています。ディオールのクライアントのため、今年の注目アーティストについてメモをまとめることで、エリート・クライアント・マネージャー向けに最新の展覧会トレンドに関する知見と、顧客を惹きつけるためのトークポイントを提供します。
2022年5月18日~22日、フリーズ・ニューヨーク
今年のフリーズ・ニューヨークでは、アメリカ人アーティストのキャロル・ボヴェが注目を集めました。 デイヴィッド・ツヴィルナーギャラリーが代理を務めるこのアーティストは大胆な彫刻作品で知られ、作品の多くにはステンレスが用いられています。価格は16万4000ポンド(20万ドル、19万1000ユーロ)から49万2000ポンド(60万ドル、57万4000ユーロ)で、ボヴェの全作品は3時間で完売しました(出典:Artnet)。
2022年4月23日~11月27日、ヴェネチア・ビエンナーレ
2021年の開催延期を経て、ヴェネチア・ビエンナーレは今年、フェミニズムと周縁化されたアーティストに焦点を当て、メイン展示のアート作品の9割が女性アーティストによるものとなって帰ってきました。英国のソニア・ボイスと米国のシモーヌ・リーがこのイベントの最高賞である金獅子賞を受賞し、同時にビエンナーレで自国を代表する初の黒人女性アーティストとなりました。
2022年6月16日~19日、アート・バーゼル・スイス
著名なギャラリーに加えて、今年のアート・バーゼル・スイスではさらに遠方からのアーティストも迎えられる予定です。アンゴラのJahmek Contemporary ArtギャラリーとセネガルのOH Galleryはこのフェアで初めて作品を発表します。アート・バーゼルのグローバル・ディレクター、マーク・シュピーグラー氏は、「中東やアフリカといった地域から応募するギャラリーがこれまで以上に増えています」と述べています(出典:アート・ニュースペーパー)。
話を広げる:ディオールは、ピーター・ドイグやジュディ・シカゴといった大物アーティストとコラボレーションをしています。クライアントにとって、夢の芸術的コラボレーションはどんなものか聞いてみてください。
画像: シモーヌ・リーによるヴェネチア・ビエンナーレの米国パビリオン(2022年)
最近のオークションでは、投資対象としてのファインジュエリーが引き続き堅調であること、また、市場に新たなトレンドが生まれつつあることが明らかになっています。
クリスティーズで行われた最近のオークションでは、シュルレアリスムのジュエリーが脚光を浴び、マン・レイ、マックス・エルンスト、ノマ・コプリーやクロード・ラランヌといったアーティストがデザインした作品が想定額の2倍、3倍の高値で取引されました。専門家のアッレグラ・ベッティーニ氏によると、アーティストがデザインしたジュエリーが高騰したのは、その芸術的価値により単なる「金の重さ」以上の価値が加わるからだということです。
シュルレアリスムの復活は、カルティエのクラッシュ・ウォッチが突然爆発的に売れたことの説明にもなります。セレブに人気のこの時計の1967年版は、最近のオークションで120万ポンド(150万ドル、140万ユーロ)で落札され、以前のオークションでの落札価格のほぼ2倍となりました(出典:ロブ・レポート)。ミュージシャンのカニエ・ウェストとラッパーのタイラー・ザ・クリエイターなど、あらゆる人が着用するこの時計は世代を超えた魅力を持っています。
話を広げる:ラグジュアリー・メゾンは、サイン入りジュエリーが匿名のコレクションよりも価値を持つことを認識しています。たとえば、ヴィクトワール・ド・カステラーヌのサインが、ディオールのジュエリーをいかに貴重なものにしているかを考えてみましょう。
画像: パリ、ラ・ギャラリー・ディオール
長年にわたり、貴重な美術品は高級店で取り扱われてきました。そして今、ブティックがアートの向かう先となりつつあります。それが特に顕著なのがラ・ギャラリー・ディオールです。ここでは、メゾンのアーカイブが一般公開されています。ムッシュ・クリスチャン・ディオールがギャラリストとしてのキャリアをスタートさせたことにちなみ、このオープニングは注目すべきオマージュです。
スペインのブランドロエベが最近改装したバルセロナの店舗は、クラフトや洗練された素材のプラットフォームとして異なるアプローチを取っています。このブティックは日本人アーティスト、四代目田辺竹雲斎による特別なインスタレーションを特徴としており、日本の四国にしか生えていない虎斑竹を6000本使った内装が施されています。
さらに今後は、デジタルアートやNFT(非代替性トークン)アートがラグジュアリー・リテール業界に参入してくることが予想されます。1月には、百貨店グループのセルフリッジズがファッションブランドのパコ・ラバンヌとアーティスト・エステートのヴァザルリ財団と提携し、フランス系ハンガリー人アーティストであるヴィクトル・ヴァザルリの作品にインスパイアされたパコ・ラバンヌNFTのシリーズを販売しました。
話を広げる:映画、演劇、バレエなど、ディオールのブティックが主催できる他の文化的イベントやパフォーマンスにはどのようなものがあるでしょうか?
新しい美術館やギャラリー、実験的な会場がいくつもでき、韓国の都市ソウルは急速に新しい文化の中心地となりつつあり、企業の注目を集めています。
9月には初のフリーズ・アートフェアが開催されるほか、この1年間にはケーニッヒやタデウス・ロパックなどの国際的なギャラリーがソウルにオープンしました。
非商業的なスペースも盛んで、Museumheadのようなより若く、オルタナティブな会場により、この急成長中のアートシーンは誰でも楽しめるものとなっています。他にも、Out Sightのような実験的なアートスペースが話題を呼んでいます。このギャラリーでは最近、韓国のアーティスト、デュー・キムによる、セクシュアリティ、ジェンダー、BDSMをテーマとしたショーが開催されました。
話を広げる:Museumheadのような実験的なアートスペースはランウェイショーの場所としてふさわしいかどうか、クライアントに聞いてみましょう。
画像: ソウル、Museumhead
新しいタイプのアート・スタートアップが増加しており、(作品の一部とはいえ)一般人でもピカソ作品を購入できるようにすることで、アートの所有権を民主化することに貢献しています。
MasterworksやParticle、Mintusといった企業は、アンディ・ウォーホル、ゲルハルト・リヒター、ピカソなど世界的に著名なアーティストの作品を購入し、その作品を分割して投資家に所有権の一部を販売することを狙っています。
このモデルは成功を収めつつあります。2021年、Masterworksは3億2800万ポンド(4億ドル、3億8200万ユーロ)を美術品に費やし、世界最大のアート消費者となりました。
話を広げる:高級ハンドバッグやジュエリーなどのファッション資産が分割所有される未来は来ると思いますか?
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